近年、ChatGPTをはじめとする生成AIが急速にビジネスの現場へと浸透しつつあります。
営業資料の作成からマーケティング施策の立案、社内文書のドラフト生成まで幅広い用途でその力を発揮しています。
その一方で、「期待した結果が出ない」「手直しに時間がかかってしまう」といった課題も浮上しています。
こうした課題の多くは生成AIに対する指示の出し方──すなわちプロンプト設計に起因しています。
そこで注目されているのが、「プロンプトエンジニアリング」というスキルです。
本記事では、生成AIの力を最大限に引き出すためのプロンプトエンジニアリングの基本的な考え方と、
すぐに実践できるテクニックをわかりやすくご紹介します。
一言で言えば、「生成AIから望ましい返答を得るために指示(=プロンプト)を設計する技術」です。
生成AIは、単に質問に答えるだけのツールではなく、高度な自然言語処理能力を備えた「チームメンバー」です。
ただし、その能力を最大限に引き出すには、人間による適切なナビゲーションが必要です。
生成AIは与えられたプロンプトをもとに、最も適切だと判断される返答を返します。
そのため、プロンプトが曖昧だと生成AIの返答も不正確になったり、期待に沿わなかったりする可能性があります。
❌「最近ダイエットを始めました。何を食べればいいか考えてもらえますか。」
→あいまいな目的や条件により、生成AIの返答にブレが生じやすいです。
🔵「以下の条件に基づき、1週間分の食事プラン(朝・昼・夜)を箇条書きで提案してください。
目的:ダイエット(低カロリー・高たんぱく質)
条件:各食10分以内で調理可能、和食中心
特記事項:過度な制限なし、おやつは1日1回OK」
→目的・制約・出力形式が明確なため、生成AIから精度の高い返答が得られます。
要素 | 説明 | ポイント |
指示(Instruction) | 実行してほしいタスク |
|
文脈(Context) |
|
|
|
|
|
出力形式(Output Indicator) |
|
|
ビジネス文書として適切なトーンを用いてください。
以下では、生成AIの活用において知っておくと有益な代表的プロンプト設計手法をご紹介します。
💡Zero-shot
例を提示せず、タスクの指示だけで生成AIに返答させる基本的な手法です。
簡潔な処理が求められる場面や、AIの基礎能力を前提とした問いかけに適しています。
例:次の英文を日本語に翻訳してください: I have two cats. |
💡Few-shot
複数の例を提示することで、パターンや期待される返答形式を生成AIに学習させる手法です。
返答の一貫性と精度が向上しやすくなります。
例:Q: アメリカの首都は? → A: ワシントンD.C. Q: フランスの首都は? → A: パリ Q: イギリスの首都は? → A: ? |
💡Chain of Thought(CoT)
問題解決の過程をステップバイステップで思考させることで、論理的推論を促す手法です。
複雑な計算や因果関係の分析が必要な場合に有効です。
例:あるバスに子どもが8人乗っています。それぞれの子どもが2冊ずつ本を持っています バスの中の本の合計は何冊ですか? ステップバイステップで考えてください |
💡Zero-shot CoT
Zero-shotに「ステップバイステップで考えてください」等の指示をすることで、CoTを引き出すハイブリッド手法です。
即応性と論理性の両立が可能になります。
例:次の計算問題をステップバイステップで考えて答えてください: 7×4÷2は? |
💡Self-Consistency
CoTの返答を複数生成し、最も一貫性が高く信頼できる返答を選択させる手法です。
生成AIの返答の信頼性・正確性を高めたい場合に有効です。
例:Q: アリスは5つのリンゴを持っています。2つあげて、3つもらいました。いくつ持っている? 複数のCoT出力: 5 - 2 + 3 = 6 5個 → -2 → +3 = 6 最初5個、2つあげて3つもらう → 6 |
💡ReAct
「思考(Reasoning)」と「行動(Acting:ツール利用など)」を交互に行わせる手法です。
外部情報を活用しながらタスクを遂行するエージェント型アプローチです。
例:質問: 東京スカイツリーの高さは? 思考: 正確な高さを調べる必要があります 行動: ウェブ検索「東京スカイツリー 高さ」 |
💡Generate Knowledge
タスクに先立ち、関連する基礎知識を生成させてから本題に取り組ませる手法です。
思考の土台を明示的に構築でき、深みのある返答を得やすくなります。
例:1. 「なぜ夏は暑いのか?」に答えるために必要な知識を列挙してください 2. 上記の知識をもとに質問に回答してください |
💡Directional-Stimulus
トーン・文体・構成の方向性を明示し、返答に一定の方向性を誘導する手法です。
ブランドトーンの統一や特定文体の模倣に効果的です。
例:以下の文章を、専門家が執筆したような論理的で説得力のある内容に書き直してください |
生成AIの実力を引き出せるかどうかは、あなたの「プロンプトエンジニアリング力」次第です。
現在、ビジネスの現場では次のようなニーズが急増しています:
✅ 営業・マーケティング資料の品質を安定させたい
✅ カスタマーサポート対応を効率化しつつ、丁寧さも保ちたい
✅ 社内文書作成をもっとスマートに自動化したい
これらすべての課題に対して、プロンプトエンジニアリングは効果的な解決策となります。
生成AIを頼れる「チームメンバー」として活用するために、ぜひ本記事で紹介したノウハウをご活用ください。
弊社では、Salesforceを活用した業務改善・カスタマーサポートのDXを多数ご支援しています。
「自社の課題に何が適しているかわからない」といったご相談も歓迎です。
導入設計から運用支援まで、経験豊富なコンサルタントが丁寧にサポートいたします。